その日の気温は27度を超え、非常に蒸し暑い日だった。地元で有名な男子新体操の演技会が清明高校で行われることになっていた。出場するのは、神埼清明高校、神埼ジュニア新体操クラブ、佐賀ジュニア新体操クラブ。どのチームも全国区である。会場には100名近い観客が訪れ、用意されていたイスでは到底収まり切れないほどの人の数。それと比例した期待度と言ったところか。
今回の演技会の目的として、清明高校は6月17日、18日に開催される九州高校総体に向けて、ジュニアは9月に行われる全国大会の予選会に向けて創作された演技のようで、演技会開始前には、SNSにアップしないようにアナウンスがあった。この時期の演技というものはとても貴重だということを再確認した。
【佐賀ジュニア新体操クラブ】
昨年は小学6年生と、中学1年生という若さで全国大会5位というチーム。ケガをしてタンプリングをしていない選手が1名いたが、豊富な運動量と転回のスピードには驚いた。序盤の畳みかけも素晴らしく、出だしの構成は観客の心を一気に引き寄せる。第一タンプリングラストの2人の同時性非常に高く、会場が湧いた。その後流れるような隊形移動は疾走感を感じる。倒立もぴたり。まだ、演技完成までの過程の段階だが、今年は昨年からのメンバーがほぼ変わらないということで全国を狙えると感じた。今年は大いに期待したい。
【神埼ジュニア新体操クラブ】
6人がフロアに並んだ時、小柄だなと感じた。昨年は団体で全国3位となっているが、そのメンバーから3人が入れ替わり、中には小学生が2人も入っていると聞いた。今年は我慢の年になるかと思っていた。しかし、演技が始まった瞬間その不安は一掃された、6人が作り出したものは、縦横無尽に飛び回る生き物のようだった。息の付く間もなく一気に演技中盤まで畳みかけられた。第一タンプリングもそれぞれの選手が高難度の技を行っていた。
曲のトーンが落ち着き、大きく深い徒手で同時性を感じた。バランスはピタリ、倒立は少しぐらついたが、ぱちんと音が鳴るほどの突きの強さがあった。3連バックから伸身の宙返りは同時性満点。着地もピタリと抑えた。
演技も半分、1列からのカノンに見とれているといつのまにか前方左右に分かれて走りこんできていた選手たち。その後も2連3連と次々に現れる隊形変化は見事。絶妙な緩急を伴いながら神埼得意の組技も高さがあり迫力満点。柔軟後曲調が盛り上がり、いよいよフィニッシュに向けて会場も盛り上がりを見せる。交差はずらしての実施だが、テンポのスピード落ちず、ラストの選手のタンプリングから妙技。さらにそこを2人の選手が飛び越えた。
小さな選手が前方宙返りで投げ上げられる組技で終わりかと思った矢先、6人全員が天をつかむように跳躍。そこから6人が左から右へ大移動からさらに隊形を変えてフィニッシュ。凄まじい3分間だった。圧倒された。これ以上のジュニアチームは出てくるのか。間違いなく全国上位戦線に絡むだろう。
【神埼清明高校】
大トリに登場したのは神埼清明高校。返事の前から王者の貫禄がある。3月に全国選抜で優勝したばかりだ。今年はどんな演技を見せてくれるのか。面白い組でスタートし、6人全員が揺れながら前を睨む、数秒もない時間だが時が止まったように感じるほどの威圧感。曲調激しくなってからはあまりの迫力と運動量。息をするのも忘れるとはこのことだと感じた。3連バックからの伸身宙返りぴたり。演技も後半に差し掛かるところだが運動量が落ちることはなく、選手たちのスピードも落ちない。ここまで攻めた構成は久しぶりに見た。止まっているところのほうが少なく感じた。基本徒手も大きく伸やかで、全身から発せられるエネルギーにただただ魅了される。
気づいたらいつの間にかフィニッシュ。最後まで運動量が落ちず、すべての移動が工夫されており見ていて飽きない。随所に見せる組運動や表現力の高さに驚かされる。2冠達成に死角なし。今年は鹿児島でプレ国体が開催される。冠達成も見えてきた。それほどまでに魅力のあるチームになっている。
そのほかにも神埼ジュニアのちびっ子たちが元気よく踊り、OBたちによる団体演技も披露された。とても充実した時間の演技会だった。今年の佐賀もやはり強い。そして間違いなく全国のトップであると感じた。
文章提供 K・Kさん